Damping and Acousitic Materials
( 制振・吸音材料 )
外部電気回路接続した圧電性高分子の粘弾性特性と音響特性
圧電性材料は、機械エネルギーと電気エネルギーを相互に変換する材料であり、マイクロフォン、スピーカー、センサー、アクチュエータなどに応用されています。
振動や音などの機械的エネルギーが印加される際、粘弾性体では材料内部の粘性によりエネルギーロスを生じますが、圧電体においては、粘性に加えて、圧電性により発生した電気エネルギーのロスも生じます。そこで、外部電気回路を接続して材料のインピーダンスを調整し、電気エネルギーのロスを増加させることにより、材料全体のエネルギーロスを向上させることができます。これまでに外部電気回路としてインダクタンスを接続することにより、制振性の指標である損失弾性率、tanδを約6倍に向上することに成功しました(Figure 1)。また、外部電気回路接続により、材料の粘弾性特性、音響特性が調整可能な材料の創製が期待できます。
当研究室では、本システムの粘弾性特性、音響特性について、電気的、機械的な観点から解析を行い、電気パラメータや材料物性との関連を明らかにすること、また外部電気回路を接続した効果の高い材料の開発を行っています。
板・膜振動型吸音材料の吸音機構の解明と設計指針の確立
吸音材料は、主に多孔質型、共鳴器型、板・膜振動型の三種類に分類されます。その中で板・膜振動型吸音材料は、板・膜状のサンプルと背後空気層からなり、選択的ではありますが、比較的低い周波数域で高い吸音率を示すことが知られています。吸音材料として幅広く用いられているグラスウールなどの多孔質型吸音材料は、中・高周波数域に対しては優れた吸音性能を示すものの低周波数域にはあまり効果がありません。そのため、他の吸音材料との組合せによるより幅広い周波数域の吸音や、近年問題視されている低周波音に対して、板・膜振動型吸音材料は有用であると考えています。
板・膜振動型吸音材料は、サンプルと背後空気層からなる系の固有振動数で選択的な吸音を示すことから、吸音特性を論じる上でサンプルの振動状態を考慮する必要があります。そこで、これまでに吸音測定中のサンプルの振動状態を測定するシステムを構築しました(Figure 2 and 3)。より低周波数域で高い吸音性能を示す材料の実現を目指して、板・膜振動型吸音材料の吸音機構の解明と設計指針の確立について研究を行っています。