Conductive Polymer Composites
( 導電性高分子複合材料 )

Nano-Carbon-Filled Conductive Polymer Composites
( ナノカーボン充填系導電性高分子複合材料 )

  絶縁性のポリマーにカーボンブラック(CB)粒子や炭素繊維などのような導電性のフィラーを充填させていくと、マトリックスポリマー内でフィラーによる導電性ネットワークが形成され、複合系の体積抵抗率はあるフィラー充填量で急激に減少し、導電体へと変化します。この絶縁体から導電体へ転移的に変化する現象はパーコレーションと呼ばれ、その時のフィラー充填量をパーコレーションしきい値と言います。パーコレーションしきい値近傍の領域では、わずかなフィラー充填量の変化で複合系は絶縁体から導電体へと急激に変化するため、半導体領域での抵抗率の制御は困難なものとなっています。また、パーコレーションしきい値より少ないフィラー充填量の複合系をそのマトリックスが溶融状態となるような高温に保持すると、絶縁性を示していた電気伝導度がある時間で急激に増加します。この現象をダイナミックパーコレーション、電気伝導度が急激に変化する時間をパーコレーション時間と呼んでいます。これらの現象は、マトリックスと導電性フィラーの種類や組成だけでなく、フィラーの分散状態によっても大きく異なります。

  当研究室では、このようなフィラー充填系の導電性高分子複合材料において、パーコレーション及びダイナミックパーコレーション現象、フィラー分散状態の評価、フィラー分散状態と電気特性との関係、それらの制御などについて研究しています。

Ion-conductive Polymer Composites
( イオン伝導性高分子複合材料 )

  ポリエーテル系の高分子とリチウム塩などの金属塩からなるイオン伝導性高分子(ICP)は、固体状態でも比較的高いイオン伝導度を持つことから、新しいエレクトロニクス材料として期待されています。しかし、ポリエチレンオキシド(PEO)−塩複合体に代表されるこれまでの固体のICP材料のイオン伝導度は室温において最大で 10−4 S/cm 程度であり、また、柔らかくて力学的性質にも劣っています。溶媒等を含まない完全にドライな固体で、室温で 10−3 S/cm 以上のイオン伝導度を持ち、柔軟で丈夫なフィルム状の高分子固体電解質(SPE)が作製できれば、エレクトロニクス材料としての利用が広がると期待できます。また、イオン伝導度があまり高くなく、半導電領域のものであっても、大気中での伝導度の安定性や優れた力学的性質を有する材料ができれば、その応用も広がります。

  当研究室では、絶縁領域から半導電領域のイオン伝導度を有し、力学的性質にも優れたICP複合材料を作製し、それらの構造と電気特性や力学的性質などの物性との関係について研究しています。